無口な相方と組んだ日、それでも現場は回っていった

体験談
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🪶 管理人 はな/投稿体験より

花壇と緑に囲まれた市営の複合型レジャー施設の園内通路今日は、市営の複合型レジャー施設で、アトラクションの受付をしてきました。

最近は、少し図々しくなってきたのか、朝はゆっくりめに出られる仕事を選ぶ日が増えました。
ゆっくり行って、ゆっくり帰る。以前の私にはなかなかできなかったことです。

それだけ隙間バイトの仕事自体が増えたのもありますし、自分でもだんだん時間が読めるようになってきたのだと思います。

以前は、目的地まで「一時間くらい見ておけば大丈夫」と表示されていても、
「いやいや、そんなに甘くはない」
と、その倍くらい見積もって出発していたので、周りに驚かれることもありました。今は一時間余裕をもって出るくらいに落ち着きました。
……それでもやっぱり早いのですが。

雨の日のアトラクション受付

この日はあいにくの雨で、もしかしたら「中止」のメッセージが入るかな、と思っていたのですが、来なさそうなので、出かけることにしました。
到着してからは途中で晴れ間も見え、気温としては過ごしやすい一日でした。

ただ、肝心のお客さんがまばらで、仕事らしい仕事をしないまま時間が過ぎていきます。

私が担当したのは、1歳半くらいから小学高学年まで遊べる、風船遊具のアトラクションでした。
屋根がついているため、雨でも通常どおり運営しています。

しかも二人体制。
それを聞いて、少しほっとしました。

予定より20分ほど早かったのですが、説明も受けたかったので、早めに現場へ向かうことにしました。

ペアの大学生が、ほとんど話さない

現場を案内され、ペアになる方を紹介されました。
何度もこの持ち場を担当しているという女子大学生でした。

「よろしくお願いします」

まずは挨拶。
ここまでは順調でした。

けれど、その後の時間が、ある意味では修行でした。

春休み中だというのにお客さんはほとんど来ない。
しかも、ペアのその子は一度もこちらを見ず、私が話しかけても「はい」で終わりです。

「これまで他のアトラクションも担当されてきたんですか」
と聞いても、返事は頷きだけ。

では仕事の話をと思い、
「お客さんにトイレを聞かれたら、あちらが一番近いのかな」
と聞くと、
「はい」
で終わり。

「向こう側にもあるのかしら」
「はい」
……また無言。

そんな調子で、午前中が過ぎていきました。

それでも、同じ態度を崩さないことにした

お昼が過ぎても、彼女は一度も私の方を見ず、人数の確認とお金の計算ばかりしていました。

話すのが好きではない人もいるだろう、と私も思います。
なぜなら、私自身もどちらかといえば、お喋りなほうではないからです。

とはいえ、

「同年代以外とは話す気がないのかな」
「私が何かやりにくいのかな」

などと、いろいろ考えてしまうのも事実です。

でも不思議なもので、私はこの年頃の子を育ててきた親でもあるからか、そんな態度にさえ、どこか少女と大人のあいだにいるような可愛さを感じてしまうのです。

もちろん、こちらも仕事で入っています。
けれどその子は、一度も私に仕事を振らず、受付で渡すリストバンドもずっと自分で握りしめていました。

どうしたものかと思っていたところへ、3人姉妹のお客さんが受付の前に来ました。

人によっては、自分の仕事を他人に取られたくないと思うこともあるでしょう。
ですから、代金の支払いや保護者の方への説明は見守るだけにして、私は子どもたちに話しかけながら、

「一つは、私がつけていいですか」

と聞いてみました。

すると、リストバンドを渡してくれました。
そこから少しずつ、一緒に仕事ができるようになっていったのです。

子どもたちへの対応が、空気を変えた

もともとアトラクションの担当なので、時折来る子どもたちに話しかけたり、笑顔で案内したりするのは自然にできます。

その大学生にも、私は子どもたちと同じようにやわらかい笑顔を向けながら、
「これだけ人が来ないと、かえって疲れますね」
などと声をかけていました。

反応は相変わらず薄かったのですが、こちらも鈍感なおばさんのふりをして、同じ態度を崩さないことにしました。

変化が起きたのは、午後を少し過ぎた頃です。

小学高学年くらいに見える3人組を受付したのですが、ほかに誰もいなかったこともあり、かなり大きな声をあげながら、危ないくらいの勢いで走り回って遊び始めました。

その後、小さな子どもを連れた別のお客さんが入ってこられたので、私がやさしく注意しに行くことにしました。

「ね、お姉ちゃんたち。これから小さな子が入って遊ぶので、少し注意してあげてくださいね」

もし聞いてもらえなければ、次はもう少し強い言い方も必要になるかもしれません。
けれど、その後しばらくは静かに遊んでくれて、特に苦情もありませんでした。

はじめて交わした、仕事らしい会話

ただ、小さなお子さん連れのお客さんが帰り際に、こう尋ねてこられました。

「ここって何歳までいいんですか」
「あの子たち、小学生なんですか」

私は、ふと隣の担当者を見ると、彼女は少しそわそわしていました。

「あの子たち、小学生だと思い込んでいたけど、ひょっとしたら違うのかしら」

そう言うと、彼女がはじめて、きちんと言葉で返してきたのです。

「それを聞いても、向こうが正直に言うとは限らないので、あまり意味ないです」

やっと受け答えの会話が成立した瞬間でした。

さらに彼女は、自分からこう続けました。

「でも……クレームになったらどうしよう……」

その言葉を聞いて、ああ、この子は無関心なのではなく、むしろ気にしすぎて固くなっていたのかもしれない、と思いました。

「私から聞いてくる? でも、もし中学生だったとしたら、どう対処したらいいかな」
「でも、一度は聞いたほうがいいかもしれない」
「そう。それじゃ聞いてくるね」
「お願いします」

そんなふうに、ようやく仕事らしいやり取りができました。

私がそれとなく確認して戻り、
「小学生だって」
と伝えると、

「はぁ……もやもやがすっきりした」

と、彼女は笑顔を向けてくれました。

「すっきりしたなら、よかった」

そう言って少し笑って話したあと、また彼女は頷くだけの無言に戻ってしまいました。
けれど、明らかに肩の力は抜けていました。

ボールペンを太鼓みたいにたたきながら、身体を揺すっている姿を見て、少しだけ心を開いてくれたのかな、と思いました。

無口でも、一緒に働けることはある

隙間バイトでは、その日その場で初めて会う人と組むことがよくあります。
話しやすい人もいれば、そうでない人もいます。

でも今回あらためて思ったのは、たくさん話せなくても、一緒に現場を回していくことはできるということでした。

最初から打ち解けられなくてもいい。
相手が無口でも、ぎこちなくても、仕事の中で少しずつ呼吸が合ってくることはあります。

無理に距離を縮めようとしなくても、必要な場面で声をかけ、同じ態度を崩さず、相手のペースを尊重する。
そんな関わり方も、現場では大切になるかもしれません。

この日は、お客さんが少なくて暇な時間も長く、ある意味では疲れる一日でした。
けれど最後には、最初とは違う空気で持ち場に立つことができました。

無口な相方と組んだ日。
それでも現場は、ちゃんと回っていったのです。

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