身内だけで運営されている会社は、
傍目にはとても和やかに見えることがあります。
言いたいことを言い合えて、
上下関係もゆるく、
なんだか気さくで、居心地がよさそう──
そんな印象を持たれがちです。
けれど、
そこに身内ではない人が一人入ると、
空気は一変します。
表向きはフラットでも、
決定権は暗黙の了解で身内にあり、
何かあれば話はいつの間にか「家族会議」で決まっている。
説明は省略され、
不満は言語化されず、
「察すること」が当たり前になる。
冗談の延長のような注意、
身内だから許される物言い、
そのどれもが、外の人間にはじわじわと効いてきます。
実は、
うちの娘も、主人も、そして私自身も、
そういった会社に入った経験があります。
三人とも共通していたのは、
仕事そのものよりも、人間関係で消耗したということでした。
悪意があるわけではない。
でも、守られている輪の中に、
自分は決して入れない。
その感覚が、
思っている以上に心をすり減らします。
身内経営が悪い、という話ではありません。
ただ、外から見える「和やかさ」と、
中に入って感じる「居心地」は、
必ずしも同じではない──
それだけは、経験した人にしかわからないことかもしれません。
身内だけの会社で感じたしんどさは、
「自分の適性がないから」でも、
「我慢が足りないから」でもありませんでした。
それは、
最初から役割と距離が決められている場所に、
外から入ったというだけのこと。
どんなに頑張っても、
どんなに誠実に働いても、
越えられない線がある職場は、確かに存在します。
だからこそ、
「合わなかった」という判断は、
逃げでも失敗でもなく、
自分を守るための選択だったのだと思います。
仕事は、
努力だけで報われる場所である必要はありませんが、
少なくとも、
安心して呼吸できる場所であることは大切です。
もし、
理由のわからない居心地の悪さや、
言葉にできない疲れを感じているなら、
それはあなたの感覚が間違っているのではなく、
環境との相性の問題かもしれません。
働く場所を選ぶというのは、
収入だけでなく、
「どんな空気の中で自分が消耗せずにいられるか」を
選ぶことでもある──
そんな学びを、私はこの経験から得ました。


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