添乗員の仕事というと、
バスの中で案内をしたり、観光地で人数確認をしたり、集合時間を伝えたりする姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。
それも大切な仕事なのですが、
実際には、
お客様の前に立つ前から、すでに添乗員の仕事は始まっています。
そのひとつが、座席表の作成です。
ツアーの参加者は、直前まで変わることがある
私が添乗員としてデビューしたばかりの頃、驚いたことがあります。
それは、
ツアーの参加者が前日に増えることもある
ということです。
もちろん、二日前くらいにすでに満席になっていれば、それ以上増えることはありません。
でも実際には、直前にキャンセルが出たり、その空いた席に別のお客様が入ったりすることがあります。
私は当初、
「前々日には確定される」
と聞いていました。
ところが、前日にもう一度確認してみると、
新たなお客様が加わっていたことがありました。
しかもその時点で、私はすでに座席表を記入していました。
正直、かなり慌てました。
見間違い??いや、見落とし?とまず自分を疑ったのですが、打ち合わせは前々日に行われていたし、その時には、他のスタッフと確認しているので、それはありえない・・こういうこともあるのだと思いました。
今の時代、旅行会社からはiPadやスマホを貸与されます。
私たち添乗員は、そこに表示される情報を頼りに、ツアーを遂行していくことになります。
旅行会社と頻繁に電話でやりとりするわけではありませんが、変更がないか確認したり、何か変更があれば、その都度、派遣元にメッセージを送ったりする必要があります。
ツアーの席は、添乗員が決める
ツアーの座席は、なんとなく自動で決まっているように見えるかもしれません。
でも実際には、添乗員が席を決めています。
会社に打ち合わせに行ったとき、座席表の用紙を受け取り、
会社で記入することもあれば、自宅に持ち帰って書くこともあります。
ただ適当に名前を入れればよい、というわけではなく
人数、グループ構成、子供連れかどうか、足の悪い方がいるか、前方席の希望があるか。
いろいろな条件を見ながら、全体のバランスを考えていきます。
ときには、前方席を有料で希望されている方もいらっしゃいます。
その方がおひとりで参加されていて、しかもツアーが満席だった場合、隣にはどの方に座っていただくのがよいか、悩むこともあります。
座席表づくりは、地味な作業ですが、
お客様同士の距離感や、当日の過ごしやすさまで考える、意外と神経を使う作業です。
宿泊ツアーでは、座席を入れ替える配慮も必要
日帰りツアーでも座席表づくりは気を使いますが、
宿泊ツアーになると、さらに考えることが増えます。
たとえば、行きに後方の席だった方には、帰りは少し前方の見晴らしのよい席に座っていただく。
前日とは違う席にして、なるべく不公平感が出ないようにする。
こうした配慮も、添乗員の仕事のひとつです。
しかも宿泊の場合は、朝にはお客様に座席を提示しなくてはいけません。
つまり、前日の業務が終わったあとも、翌日の座席をどうするか考え、書き直し、確認する必要があります。
一日の仕事が終わったように見えても、添乗員の頭の中では、まだ翌日の準備が続いているのです。
子供連れのお客様がいる場合も気を使う
子供が参加している場合も、座席の配置には気を使います。
長時間のバス移動では、周囲のお客様との距離感や過ごしやすさも大切になります。
ご家族がまとまって座れるようにしながら、
周囲の方にもなるべく負担がかからないようにする。
そういうことを考えて席を組む必要があります。
一見すると、ただ名前を書くだけの作業、
でも実際には、
その座席表の中に、添乗員なりの判断や配慮がかなり詰まっています。
見えないところで、することだらけ
添乗員の仕事は、お客様からは見えないことの方が多いです。
出発前の確認、座席表の作成、人数変更への対応、立ち寄り先との確認、書類の準備、当日の流れの把握。
そして、もし前日に参加者が増えれば、
すでに作った座席表も見直さなくてはいけません。
デビューしたてだからといって、こうした出来事が避けてくれるわけではありません。
現場は容赦なく動きます。
だからこそ、添乗員の仕事には、
華やかに見える部分とは別に、かなり細かな事前準備と調整力が求められます。
添乗員は「旅の裏側」を支えている
お客様にとっては、ツアーは楽しみにしていた一日です。
座席が決まっていて、バスが出発して、観光地に着いて、食事をして、予定通り帰ってくる。
それは、お客様にとっては当たり前のこと。
でもその当たり前の裏側には、
細かな確認や、直前の変更への対応や、見えない調整があります。
座席表ひとつをとっても、
ただの紙ではありません。
その日一日の旅を、少しでも気持ちよく過ごしてもらうための、
小さな設計図のようなものなのだと思います。
添乗員の仕事は、
バスに乗ってから始まるのではなく、
そのずっと前から始まっている。
デビューしたての私がまず実感したのは、
まさにそのことでした。

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